ペトロナス ~リンギットはこの会社の業績にリンクする
マレーシアで最も有名な企業はこのペトロナスではないでしょうか。アジアを代表する高収益企業で、石油・天然ガスの生産から精製、小売まで一貫して手掛けています。クアラルンプールの本社ペトロナスツインタワーは観光地としても有名。
オイルショックで原油は儲かると見たマレーシア政府が74年に設立した国営企業で、運営は独自でやっているものの、株は財務省が保有しています。日本にも液化天然ガス(LNG)を輸出しており、少なからず影響を持つ企業です。
とりあえず売上高と利益水準をみてみますと・・・
売上11兆円に対して営業利益3兆円のものすごい企業です。2014年は第4Qに減損を7,500億円くらい計上したので利益が減っていますが、それでもこの収益率。日本でJXホールディングスが売上高12.4兆円に対して営業利益2,000億円(2013年)を考えるとその差歴然(収益モデルが違います)。
※2012年に決算期変更(3月→12月)、2011年4月~12月は9か月を単純に12ヶ月分に直して記載。
セグメントで見ると明らかですが、石油事業の川上(石油開発)に注力して利益をたたき出す仕組みです。石油は下流に行けばいくほどマージン商売になってしまって低収益になってしまいますからね(日本の石油関連会社はこのパターン)。
しかし75年に設立されてグローバルにも新しいセブン・シスターズといわれるまでに成長させた力量はすごいです。マレーシアには財閥も含めて商才のある人材がやっぱりいるのだと思いますね。
地域別の売上高はアジア中心、基本的にマレーシアで生産して海外に売る形です。
ところで、この会社で特筆すべきは国におけるその特殊な役割です。国有ということもあり、この叩き出した収益を配当や税金等の形でお国に還元、実にマレーシア歳入の3割程度をペトロナスからの収入で賄っています(マレーシアの歳入規模は7兆~7.5兆円程度)。
ですので、ペトロナスさんの業績が下がって収入が減ってしまうと国家財政に物凄いインパクトがあるという・・・、ナジブ首相は「子が親の面倒を見るのは義務だ」とか言っているようですが・・・、この構造を何とかしないとモノカルチャーから脱出したとはいえないマレーシアです。
先日の記事でマレーシアの輸出入では石油は行って来いなので(一説にはペトロナスの作った良質の石油は輸出して、国内で使う石油は安いものを輸入しているとか)原油価格に国家財政は左右されないはずなのですが、ペトロナスを通じてもろに影響を受けるわけです。リンギットで運用を考えている人はペトロナスの業績も要注意です!
というわけで、今日のまとめ、
- ペトロナスの業績はマレーシアの国家財政、リンギットの価値に直結する。
- ペトロナスはアジアを代表する高収益企業。石油、天然ガスの次の資源ポートフォリオを模索するはず(ただし、難しい)。
- マレーシアはパーム油とペトロナスへの依存から脱却しないと「資源頼み」と言われ続ける運命に。今のサイバージャヤのICT産業はもはや時代遅れでは?今現在の立ち位置から国家戦略を見直す必要あると思います。
さて、とりあえずマレーシアシリーズは終わりにして、明日からは普通のニュースに戻りまーす。
最後にツインタワーの写真をば。グッバイ、マレーシア!